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選択肢
 冷たい雨ばかり降っていた
 ガラス越しに煙る灰色の空
 濡れてみるのもいいかもな
 冷たく冷たくなったなら
 溶けてなくなってしまえるだろうか
 やけに派手で強いネオンが
 雨に滲んで
 点滅して消えて束の間の夕闇
 そしてまた点滅
 
 これでまた君を傷つけるだろうと
 分かっていたけど目をそらした
 私はとても
 とても疲れて
 ひどく寒くて
 君が優しいのを知っていたんだ
 
 確かなことなど
 一つもないと分かっていた
 この想いも約束も
 存在も記憶もすべてすべて
 変らないものなど何もないのに
 不確かな自分を支えきれずに

 鈍感なふりをして
 誰でもいいのだと言い訳しながら
 本当は君を探していたかな
 探していたのは許された場所
 寄りかかってしまいたかった
 君の背中に額をつけて
 一瞬目を閉じて休みたかった
 そしてすぐに遠ざかりたかった

 身勝手な言い訳に過ぎないけれど
 正しく安定した距離や未来が
 今はまだひどく怖かったんだ
 また壊れてしまうなら
 揺らいだままで構わないのに


 暖かかった君の手を
 初めから振り切って逃げ切るつもりで
 実際少しも動けないで
 途方に暮れて佇んでいた
 冷たい雨に髪が濡れても
 現実は何も滲むこともなく
 明確な輪郭を保って
 決断を迫っていた
 雨の中で
 濡れたままで
 今度この手を振り切ったなら
 今度こそ
 もう二度と捕まえる事は出来ないのだと
 分かってしまって動けなかった
by ichimen_aozora | 2004-11-22 03:24 | ふたり sideA
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