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あの頃 (夏の記憶 vol.7)
 だってお前野球部だろう?

 そうだ、確かに僕は野球部だ。
 だけど、それが、なんだって言うんだ?
 今更。
 昔の事なんて、僕にはさっぱり関係がない。
 知りたくもない、と、言ったらたぶんちょっと嘘。





「片山さんと西先輩って昔付き合ってた?」
「片山に聞いたのか」
「聞いてない。さすがに俺だってわかる」
「まぁそうか」
「いつ」
「いつって言うか、もうずーっと。3年くらい」
「3年…長いな」
「なげぇよ。高校生だぞ?なんだかいとこ同士みたいにどこか似通った二人でさ、仲がよくて、囃し立てるのもばからしかったわ」
 似通ってる?
 片山さんと先輩は、今は全然印象が重ならないけれど。
「可愛かった?」
「まぁ、可愛かったんじゃねぇ?」
 どこではぐれてしまったのだろうか。
 今片山さんは可愛いというよりはむしろ。
 秋の空みたいに静かに綺麗だ。高くて遠い青空みたいに。
「卒アル見せてよ」
「ねぇよ」
「あるだろ?どっかに」
「やだよめんどくさい」
 しばらく食い下がったけど、兄貴は絶対見せてくれなかった。

「学年公認のやたら有名なカップルでな、誰も割っては入れなかったよ。片山人気あったんだけどさ、あんまり有名だから、誰も声なんかかけられないから、だから片山だけが知らないんだ」
「実は人気あったってことを?」
「男なんて他にいくらでもいるってこと」
 いつも掴み所のない兄貴が、珍しく饒舌で。
 だから。
 他って誰?とは。
 いくら僕でも聞かなかった。



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by ichimen_aozora | 2004-12-29 01:19 | 夏の記憶
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