君の名を (vol.2)
「彼女ねー…何考えてるんだか、分かるような、分からんような」
「俺にはさっぱり分からんわ」
「あんたは鈍いから」
「そうでもねーよ」
「鈍いよ」
「どこらが?」
「仏語のユミ。あんたに気があったじゃん」
「え?うそ」
「や、まじで。まぁもう、彼氏できて幸せみたいだから意味ないけどねー」
「早く言えよー。知ってたんならよー」
 ユミは結構可愛くて好きな顔だったのに。
「言えるわけないでしょー?私ユミの友達だもん」
「尚更じゃねーか。何言ってんだよ」
「振られるの分かっててけしかけられるかっつーの」
「おまえなぁ。ユミならOKに決まってんだろ?」
「そうかね?」
「そうだよ」
「しないね」
「するって」
「しないよ。あんたは」
 何故か佐々木は、呆れたように諦めたように断言した。





「これからどうすんのー?うちらももう卒業だよ。あんたどれっくらい彼女いないの」
「えーと。5年くらい…6年?」
「うわ。かわいそ」
「どーせもてませんからねー。俺はー。振られてばっかですよ」
 何だか癪に障ったからちょっと水を向けてみたけれど、佐々木はまるで気にしない様子で腕を組みなおした。
「違うって。もてない訳じゃないって」
「じゃぁなんで彼女できないんだよ」
 余りに一人身が長いからハードゲイ説も流れたが勿論そんなことはない(当然噂は水面下でもみ消した)
「好きだと言ってくれる子には見向きもしないから。好きだと言いに行く子は初めから見込みないって分かってるのばかりだから」
「好きだなんて言われてねーよ」
「雰囲気よ、雰囲気。いかにも興味ないっすって感じ」
「じゃぁお前は?最初から見込みなかった?」
「なかったよ」
「なんで」
「だって私その頃もう知ってたもん。大阪の子のこと」
「は?なんで?俺言った?」
 佐々木に彼女の話をしたのは確か、振られた後だったはずで。
「誰から聞いた?」
「藤森」
「あ…」
「藤森も同級生なんだってね、その子と」
 あの校舎に俺たちがいたのは、もう、8年も前の話だった。
 長い廊下に、すりガラスから差し込む夕日が、ひどく綺麗な校舎だった。
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by ichimen_aozora | 2006-05-02 02:18 | 君の名を
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