貝殻公園
 目の前で雨が降るから
 二人くっついたまま待っていたんだ
 濡れていく自転車と
 赤い滑り台をずっと見ていた
 雨が降るから帰れないから
 いつまでも
 止まなければいいと願った
 遠い遠い日にここで
 
 日々は驚くほど早く回るから
 思い出す暇もないけれど
 わき目もふらずに早足で歩く
 そんな日々にも慣れてしまった
 そんな毎日を受け止めている
 そんな毎日を、懸命に駆けて行くけれど
 時々ふいに湧き上がるように
 蘇ったりするのです
 自転車をこぐ君の背中や
 並んで走り抜けた夕暮れの街
 帰りたくなくて数えた一番星や
 小さな公園の片隅のベンチ
 
 大きな木の下で
 閉じ込められたような気分
 濡れていく自転車と
 貝殻の形の赤い滑り台
 とても静かだったので
 疲れているのだと気付いてしまった
 苦笑いして目を閉じる
 想い出に縋るつもりはないけれど

 音もなく雨が降るので
 もうしばらくはここにいよう
 冷たい雨が止まないので
 もう少しだけここにいよう
 いくら待っても
 君は来ないと知っているけど
 目を開いても
 君はいないと知っているけど
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by ichimen_aozora | 2004-11-13 01:59 | ひとり
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