<   2004年 10月 ( 12 )   > この月の画像一覧
親愛なる…
 すれ違っていく。
 その実感を。
 今でも生々しく、僕は覚えている。

 乗った波が違ったんだ。
 抗えない、
 強引でしかも魅力的な
 そんな双方向の力だった。
 二人をそれぞれに取り巻いた新しい環境が
 どれほど鮮やかで
 どれほど入り乱れていたか。
 僕はきっと、今でも敵わない。

 僕たちは若くて。
 浅はかで軽率で真剣だった。
 僕たちは迷ってしまったんだ。
 全てを。
 全 てをまともに受け止めるには
 余りにも些細な自分だったのに。
 僕たちは欲張りで
 優先順位なんて分からなかった。
 全てを望めば。そしてそのための努力を惜しまないならば。
 きっと手に入ると信じていたんだ。

 簡単に、壊れるような
 絆を持った憶えもなくて。
 この約束が、永遠に
 色を失うはずもないと。

 呆れるほど透きとおっていた想いが
 今では少し、苦しいけれど。

 君は元気にしているだろうか。
 相変わらず無理をしているようだと、噂に聞いたけれど。
 僕は今も故郷の街で
 あの頃君に話した夢の
 スタート地点に立ったりしている。
 君が遠くの街に行ったこと
 君の選択を、今も、最善だったと思っている。
 君の、真っ直ぐに未来を見据えた強い瞳を
 僕は今でも眩しく思う。

 新しい彼氏は出来たかい?
 優しくしてくれる人を選んで欲しい。
 君が幸せであればいいと
 その願いには自信がある。
 一生変わらない自信があるよ。
 だって君もそうだろう?
 君もきっと、そう願ってくれているだろう?
 もうそれだけしかないけれど
 それだけは変らないと君に誓える。

 あの頃、変ってしまうことが、自分たちが変っていく実感が
 とてもとても怖かったけれど。
 いつまでも、と身を切るように、同じ場所にいたかったけれど。
 なぁ。でも。僕たちは。
 あの頃よりは成長したよな。
 君だってもう、制服のスカーフよりは、
 綺麗なネックレスが似合うだろう?


 僕たちは変化する。それが僕たちの可能性。
 淋しくても切なくても遣る瀬無くても。
 強かにしなやかに伸び上がるように。
[PR]
by ichimen_aozora | 2004-10-29 07:49 | ひとり
切々
 伝わらない、という事が、こんなに哀しいことだなんて。
 僕は知らなかった。別に知らなくてもよかったのだけれど。


 僕たちは確かに、互いをちゃんと引き合っていて、雑妙なバランスで安定していて。
 僕たちは確かに、お互いが必要で、一方通行じゃない事に、溜息に近い安堵を覚える。
 僕たちは確かに、長い長い迷走の果ての、一つの答えを探し出した。
 あり得ないと諦めかけた、奇跡に近い選択肢の一つ。

 それなのにいまだ何の確定もないということが
 はがゆくてならない。
 もういいじゃないか。
 もう、僕は。
 迷子になんて、なりたくないんだ。
 君を追いかけて、君を探して
 長くて淋しい日々を
 一人彷徨いたくなんてないんだ。
 どうして君には。
 どうしていつも。
 伝わらないのだろう。
 僕たちはすれ違い続けて、長い長い時間をかけて、やっとここまで近くに来たのに。
 今、声が聞こえる、手が届く、この距離を。
 僕は全力で守るのに。

 いつの日か。
 君は行ってしまうだろう。
 君は守ろうとはしないだろう。
 君の視線の先は遠く
 君の未来は白く白く
 
 いつだって、駆け抜けていく君の事を、僕は眩しく思いながらも。
 君はきっと、一緒に行こうと誘うけれど。

 君の光を愛しているのに。
 僕は閉じ込めてしまいたい。
 君が走れなくなったら
 僕が君を守れるだろうか。
[PR]
by ichimen_aozora | 2004-10-27 05:01 | ふたり sideB
空白
 あんまり遠ざかろうとするなら
 僕が君を捕まえてしまうよ?
 君が怖いのは僕ではなくて
 今を壊しそうな君自身だろ?

 満ち足りて絵に描いたような幸せばかりを
 そうやって見ないふりをするのはやめなよ
 絵に描いたような幸せは確かにあって
 それが君に訪れても別に構わないんだ

 何に怯えてそうやって独りで
 いつまで閉じこもっているつもりなの?
 砕けてしまった君の一部を
 確かに僕はなおせないけど

 何も、なにひとつ
 なかったことには出来ないけれど
 君の、損なわれてしまった部分を僕は知ってる
 僕はきっと、君よりもよく知っているんだ
 それは一部で、全体じゃない
 君は直視しようとしないだけ

 君がどれだけ全力で逃げても
 僕は簡単に捕まえてしまうよ?
 君は淋しそうでとても目立って
 どこに行ったって見つけてしまう
 君は君が思うよりずっと
 一人で平気なんかじゃないんだ

 もういいだろう?
 失くした欠片はもどらない
 もう随分一人だっただろう?
 完璧な過去にはもどれない

 諦めて幸せになればいいんだ

 僕は君が、完全じゃなくても構わない
 僕は君が、傷だらけだって構わない
 僕は君の、過去なんか知らないままで構わない
[PR]
by ichimen_aozora | 2004-10-22 05:33 | ふたり sideB
彩り
会いたいと、呼んだ声が
君に、君に、
届くといいな

本当の、言葉なんて
きっと、きっと
言えないけれど

嵐の空は、どこも暗くて
君の姿は、見えないけれど
いつも、いつも
思っているよ
いつも、いつも
探しているよ

もう一度
恋だ、なんて
認めることすらはずかしいような
緩やかに
流れ続けた
日々の長さが
恋愛の色をしてないけど

柔らかに、肩にかかった
重みが何故かいとおしくて
疲れているの?
いつも見せない
平気な顔の、向こう側

嵐の後の青い青い空の下
何も変わらないよな、気分を抱えて
並んで歩こうただゆっくりと
冷たい風に
洗われたような
色鮮やかな季節の中を
[PR]
by ichimen_aozora | 2004-10-21 03:36 | ふたり sideA
答え
「淋しい?」
「さぁ…でも…淋しくない人なんているの?」



 ほんとはもうちょっと会いたい?と、訊ねた声はなんだか媚びているようで嫌だったな。
 いったい、私は何を知りたいのだろう。
 どんな答えが、欲しかっただろう。

 淋しいといわれれば困るのは自分じゃないか。
 淋しくないといわれれば、淋しいのは自分じゃないか。

 忙しい、忙しい毎日の中で。
 時間を作るのはそれほどたやすくはなく、かといって。
 ただ淡々と生きているだけでは、決して重ならない日常が、高い壁のように目前に迫っていた。
 私には今、とても大切なこなさなくてはならない様々な事があり、それは逃げても隠れても決してなくなる事も見失う事すら出来はしなかったけれど、君といる時間は気楽に甘くて、その壁の存在を霞ませてしまう。
 本当は、会ったりなんかしない方がいいのだ。という事は、分かっていて。
 それは初めからわかっていた事だから今更だけれど。
 まさかここまで甘美な時間になるとは思ってもいなかった。
 まさかここまで、リスクを背負えるとも思っていなかった。

 狂っていくかもしれないな。いろいろな事が。
 
 どうしよう。どうしようか。
 私は今、明日君に会うかどうかを考えている。
 いつだって、抗えないと分かっているのに考えている。
[PR]
by ichimen_aozora | 2004-10-19 06:47 | ふたり sideA
たからもの
あなたはとても正しいので
私さえいなければ
幸せになれるのではないかと
思ってしまったりするのです。

知らず知らずのうちに
私があなたを捕らえてしまったのではないかと
ふいに不安になるのです。

本当はもっと
もっと違う選択があって
あなたはその中で
もっとのびやかに生きていたりして。

私があなたを
大切なあなたを
閉じ込めてしまったらどうしよう。
大切なばかりに。
失くしたくないばかりに。
きつくにぎりしめてしまった
いつかの綺麗な貝殻のように。

いつか拾った
そして私の手の中で
ばらばらに砕けてしまった
脆くて儚い貝殻のように。
[PR]
by ichimen_aozora | 2004-10-15 05:05 | ふたり sideA
五月
疾走するは、未完のこころ。
届けばいいと、願った言葉。
欠けたままの、私の中で、走り出すのは、拙い想い。
欠けたままの、私のこころを、どうか、どうか、否定しないで。

思い出すのは、あの日のひかり。
青かった空と、吹きぬけた風。
遠くに見えた、海に向かって、泣けもしなかった、明るい午後。
眩しすぎてずっと、影を探した。
隠れてしまいたいと、ずっと思ってた。

今なら、こんなに、泣けるのに。
素直な態度は、無理してでも作るものだと、知ったのはずっと、ずっと、後だったんだ。

会いたいと、こころから。
こころから。会いたいと。
願い続けて、でも決して、叶わなければいい。
叶わなければ。
いつまでも、いつまでも、私はここにいられるでしょう
[PR]
by ichimen_aozora | 2004-10-11 04:43 | ひとり
黄昏
 夕焼けの一瞬前の
 暖かな光が差し込んできて
 何だか満たされたような気になって
 部屋の真ん中で膝を抱えた。

 とても静かで
 右から差し込む黄色い光が
 私を照らして
 何だかひどく、平穏だった。
 
 ここは一人で。
 私はきっと一人だけれど。

 夏が終わって秋が来て。
 人恋しいとかいうけれど。
 秋には悲恋の記憶もなくて
 鮮明すぎる残像もなくて。

 空は高くて淡かった。
 際立つ影ももう見えない。

 私はきっと、きっと一人で
 膝を抱えて蹲る。
 哀しくもなくて
 ただ驚くほどの完成形だった一瞬に
 囚われてしまおうかと思っていた。
 この平穏な季節の中に
 ずっと蹲っていようかと思っていた。





 
[PR]
by ichimen_aozora | 2004-10-08 05:45 | ひとり
強気
人は誰も

想い出には追いつけないわ

誰も

自分自身も
[PR]
by ichimen_aozora | 2004-10-06 22:54 | ひとり
甘い罠
 こんなふうに、好きになるつもりなんかなかったのに、と、彼女が言って、俺の胸に押し付けるように顔を隠した。
 いつだって、簡単に別れられるような、距離をとっておくはずだったのに。
 失敗したわ。
 こんなに好きになって。
 別れたらきっと泣くわね。

 押し付けたままのくぐもった声がして、俺は緩やかに髪を撫でる。
 目を閉じて、彼女の体温を思う。
「ずるいな」
「うん」
「ほんとにずるいよな。昔から」
「うん」
 彼女は逆らいもせず、ただ頷くけれどそれが、妙に哀しげで、俺はいつもずるい彼女を許してしまう。
「でも、そうだな」
「ん?」
「こんなに好きになるつもりなんてなかったよな」
 彼女が緩やかに笑い、俺はその頬に手を添える。
 笑ったからといって幸せでもなく、彼女の過去は傷口のままだろう。
 いつからこんなに、醒めた人になっていたのか、俺は聞かされた話しか知らず、途中経過を知らない。
 でも、再会してから今までの彼女はずっと、哀しげで、そして何もかも見透かすようにして、俺は弄ばれたわけでもないのにいいように振り回された。
 彼女が笑うたびに、俺はその裏側を覗き込まなければならず、そうしているうちに、ずるさで巧妙に隠した震えるような痛みを知ってしまう。
 俺はいつまでも彼女を許し、彼女はいつまでも少しだけ笑う。
 それは仕方が無いことで、それに、ぬるい果物のように、妙に甘いことだった。
[PR]
by ichimen_aozora | 2004-10-05 05:40 | ふたり sideB