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シグナル
突風がふいた
舞い上がる髪がうるさくて払いのける
周囲に溶け出していたよう曖昧だった輪郭が
ふいに際だって色を持つ
漂うように霧散していた思考を内に引き込んでみれば
私はたったひとりだった

同じ形をした存在も
同じ色を持つ存在もなくて
私は鮮やかなほどにひとりだった

一対全ての対立はひどく頼りなくも
目を見張るほどに潔く

堅く目をつぶる
手を握る
それからゆっくりゆっくり開いた
自由に動く、この体が
全てで、そして、それでいい

世界はとても大きくて
私はひどく微小だけれど

私を作るこの輪郭が
小さく強く輝けばいい

生温い連帯を剥ぎ取って
埋もれていた光を見出だすように
今、強く

突風がふいた
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by ichimen_aozora | 2005-05-30 02:50 | ひとり
寄る辺ないまま
 何か大切なものをなくした気がする、なんて言うから
 大切なものを持っていたような気がするけれど。
 大切なものなんて。
 何が大切なものかなんて。
 まるで分からないのだ、ということに思い当たってしまえば。
 ひどく白々しい言葉に感じて目を伏せた。
 何も持っていない僕はそれでも
 毎日を懸命に泳いでいて
 何も持っていないからといって何かを
 盗み取ろうとは思わない。
 軽い軽い自分の存在を認めてもそれでも
 僕は誰かに成り代わろうとは思わないし
 空っぽだと指摘されて嘲笑されても
 僕は自分を捨てないだろう。
 大切なものなんかもっていたこともなくても僕は
 前を向いていけるのに
 大切なものを持っていた人が何を
 怖がって
 進まないのだろうかといぶかしむ。
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by ichimen_aozora | 2005-05-17 14:55 | ひとり
約束
 こんなに好きになって、別れるときが怖いな、と君が言うので、別れることなんて考えるの?と聞いたら、困ったように笑った。
 どうしてそんなことを思うのだろう、僕たちは今、こんなに幸せなのに。
 何が不安だろう、と思ったけれど、それはただ、可能性の問題なんだった。
 僕たちはとても幸せで、きっと明日も明後日も幸せだと思うけれどそれは絶対ではなくて、永遠と、0にはならない可能性をはらんで生きていく。
 無用な心配だと笑い飛ばしてみても深くひっそりと根付く様々な要因が突然僕たちの平穏を壊しても、それはまったく予想外だったとは言えないんだ。
 でも君が怖いというのなら僕は。
 君を守るしかないんだから。
 君がいらないと言っても僕は。
 僕には君しかいないんだから。

 今は何が怖い?と聞いたら、君は首を傾げた。
 僕がいなくなりそうで怖い?それとも、自分が信じられなくて怖い?
 君は痛々しい目をしたままで、嫌われそうで怖いといった。

    こんなに好きになったら、嫌われちゃいそうで怖いよ
    どうして?
    だって余裕がないもの
    余裕?
    優しくする余裕も、冷静にしてる余裕もないよ

 痛々しく揺れる君の目が、僕は得がたい希望のような気がして手を伸ばす。

    別にいいよ。優しくしなくても。我が侭でも。泣いても怒っても
    でもあなたはとても優しいのに。私は全然優しくないもの

 別にいい。構わない。
 僕は手を伸ばし、指先が君の髪に触れ、頬に触れる。君が僕の手にそっと左手を重ねて、柔らかい頬に押し付ける。
 まだ冷たい空気に冷えきった君の頬は、懐かしいような感触がして、僕は君が引き寄せてくれるのを待っている。
 今すぐにでも。本当は強く抱きしめたいけれど。
 僕は、君が僕の事を、引き寄せてくれるのを待っている。

    冷たいね
    うん。あなたの手はいつもあったかい
    寒い?
    うん。ねぇ
    ん?
    そばに来て

 僕たちは今こんなに幸せなのに、君の目はいつも揺れている。
 僕たちはこんなに穏やかなのに、君はいつも凍えている。

    さみしい?
    うん。だからここにいて

 ずっとそばにいる、という言葉を僕は言わない。
 君が永遠を信じないことを知っているから、気休めは言わない。
 ただ、今、望まれるのなら。
 君が望むように。
 僕は、孤独な君をひとりにしない。
 絶対に。
 そう。絶対だ、これは。
 僕は君を、ひとりにしない。
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by ichimen_aozora | 2005-05-04 03:30 | ふたり sideB