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side by side  ―side 田島― (vol.3)
「気まずくなったらお前が辞めろよな」
 タオルの下から、狩野が唐突に言った。
「うわ。ひでぇ」
「当たり前だろう?桜井をやめさせたら承知しねぇからな」
「分かってるよ」
 桜井はしっかりしたいい奴だから、きっとやめたりはしないでくれるだろう。だから俺も、部から追い出される事はないだろう。
 俺はまだ狩野やみんなと一緒にいることができるだろう。
 そのことに、溜息をつくように安堵する。
 一人にはなりたくない。
 唯一絶対の存在を、俺はきっと手に入れることは出来ないから。
 確固たる居場所が欲しい。無条件で許される場所が。
 そんなことを考える俺はやっぱり、偽善者なのだろう。

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by ichimen_aozora | 2005-09-29 05:09 | side by side
side by side  ―side 田島― (vol.2)
「ばーか脅すな」
 パシリと後頭部をはたかれた。
「貴重なマネージャーだぞ。来なくなっちゃったらどうするんだよ」
 振り返ると狩野が、タオルを振り回しながら呆れた顔で立っていた。
「見てた?」
「見てたよ。お前が優しげな顔で呼び止めるのも、凶悪な笑顔で脅すのも一部始終」
「脅してねぇよ」
 どーだかねぇ…狩野はつぶやきながら隣にやってくるとどさっと地べたに座り込む。それに倣って俺も、コートに足を投げ出した。

「何が不満なの。桜井の」
「別に」
「そんなことばっかやってると、お前、部内で反感かうよ?」
「わかってるよ。分かってるけどさ」
 分かっているだけでどうしようもない事なんて、世の中腐るほどたくさんある。沢山あって、どれも陳腐で、いい訳すらめんどくさいと思うのに、狩野は黙って先を促した。
「桜井にはさ、もっと、真っ直ぐまともな奴が似合うとおもわねぇ?俺なんかじゃなくってさ」
「なんだそれ。どんなの」
「3組の、滝みたいなんとか」
「滝?だってあいつ彼女いるだろう。相当有名な」
「うん。だけど。とにかく。俺なんか見ないほうがいいんだよ」

 もっと綺麗で、正しくて明るくて。そういうものばかり見ていてくれればいいと思う。そして。できることなら。
 ずっと綺麗なままでいてくれればいいとおもう。
 そういう道を、選んでもいいはずだ、桜井は。

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by ichimen_aozora | 2005-09-24 03:56 | side by side
side by side  ―side 田島― (vol.1)
 どうしても手に入らないのなら、ずっと。
 見守っていこうと決めていた。
 それは強固で、しかも密やかな決意で。
 誰にも知られないはずだった。

    ☆

「偽善者・・・」
 その小さな呟きが耳に届いた時、その言葉のあまりのもっともらしさに、俺は驚いて目を見張った。
 そうだ。確かにその通りだ。
 そうか、俺は偽善者だったのか、と。僕は目をあげて声の主を探した。
 怒りも、痛みも、何もなかった。
 もっともだ。その通りだ。俺は偽善者だったのだ、と。
 ある種の感慨を覚えていただけだった。

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by ichimen_aozora | 2005-09-21 04:10 | side by side