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side by side  ―side 狩野― (vol.2)
 冷静だ、そつがない、と人には言われる。
 同時に、何考えてんだかわからないけど、と思われていることも知っている。
 まったくその通りだ、と思う。
 わかんないだろうな…
 何しろ、自分だってよくわからないのだ。

 別に世間に無関心なわけではない。むしろ積極的に関わっている方ではないか。
 他人のことにはたいした理由もなく結構心を砕いている。例えば今みたいに。
 回りの人間の揉め事や懸念の、結び目の位置は不思議とよくわかる。どこをどう引けばうまく解けるかということも。
 ただ、ひとたび自分のことになると皆目検討もつかない。
 今、自分のこころが、誰にむいているか、なんてことすらさっぱり。
 すべては一定の低温で、ひどく平らかで滑らか。掴み所もないまま、俺の些細な逡巡とはかけ離れたところで、完璧に自己完結している気がする。
 隣をあるく桜井の、のぞみを確かにひめた視線はちょっと重い、と思う。田島の、不器用に抱えたままの片思いは痛々しい、と思う。
 そんなもの、扱いが面倒そうだから別にいらない、とさめた態度を取ってはみるけれど結局のところ、やっぱりどこか、いつも羨ましかった。

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by ichimen_aozora | 2005-11-28 18:57 | side by side
side by side  ―side 狩野― (vol.1)
「狩野は桜井がすきなの?」
 無邪気な顔をしてなんてことを訊くのだ、と思った。
「桜井のことはみんな好きだろ?」
 辛うじてそう答えたら、納得したみたいで安心した。
 どっちかって言うと好みは相川、なんて、白々しいにも程がある軽口をたたいてみたら、狩野は簡単に信じてしまった。
 まぁ。あながち嘘ではないけれど。ああいう、背の高い運動神経のいい子は嫌いではないけれど。

 嫌いではない、と、好き、の間にあるなにものか、を随分前から考えている。
 きっとひどくさり気なく、しなやかで強靭で、確かな存在感を湛えた境界だろう、と想像している。

 狩野は誰が好きなの、と、聞かれなくってよかった。
 そんな難しい事を聞かれたら、本当に答えられない

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by ichimen_aozora | 2005-11-22 01:17 | side by side
side by side  ―side 桜井― (vol.2)
 彼女は前の籠に荷物を積んで、でも自転車の横に佇んでいた。

    待ち合わせ、か。……田島君と

 どうせいつだって彼の行動は私とはまるで関係がないのだ。いつだって。
 この人のためなのだから。

    田島君のこと、好きでもなんでもないくせに
    なんで独り占めなんかするのよ

 そう思ったところで、不意打ちのように肩を叩かれた。びっくりした。
 思考が暴走しそうになってたことには、そのときようやく気付いた。

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by ichimen_aozora | 2005-11-07 05:39 | side by side
side by side  ―side 桜井― (vol.1)
「桜井?あけていい?」

 扉の向こうからそんな礼儀正しい声が届いて、それが狩野くんだとわかった。
 立ち上がって、扉を空ける。途端に狭い部室の中を風が舞って、慌てて手元を押さえた。
「まだ帰らないの?仕事?」
「ああうん。スコアとか部費とか、色々」
「わるいね、いつも。任せきりで」
「だってマネージャーだしね」
 狩野君が、いつものように感じよく笑う。狩野君はいつも、はかったように同じだけ感じがいいのだ。
 
「でもさ、今日はもう上がったほうがいいよ」
「え?」
「あいつもさ、そろそろ引き揚げてくるから」
 そう言って、コートの方をさす。そこには一つだけ、ちいさく人影が見えた。
 何してんだろ。そう思ったけど考えるのはやめた。
 どうせ、私とは関係ない理由で留まってるに違いないから。

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by ichimen_aozora | 2005-11-02 03:45 | side by side