タグ:雨 ( 5 ) タグの人気記事
遠まわり
 冷たい雨が降る中を
 傘をかかげて早足で歩く
 何かに追われる様な日々の
 ただの一日だったのに
 ふと何かが記憶をかすめて
 気になって足を止める
 なんだっけ、この感覚は
 立ち止まった私を避けるように
 人の波は流れ続けて
 雑踏の中でただ一人
 ざわめきの中に包まれた静寂


 
 ああそうか、これは雨の匂い
 部活帰りの遅い放課後
 気付いた途端に包まれる
 冬の冷たい雨の匂い
 ジャージを詰め込んだかさばる鞄を
 背中に斜めにかけて
 濡れるままに自転車を走らせた
 待ち合わせの公園まで
 駆け下りていく長い坂道
 傘なんかなくて、お金もなくて
 時間だけもって君に会いに行くんだ
 凍えた手と冷たい髪の記憶



 雨の匂いなんて、とっくに忘れた気がしてたのに
 こんな人ごみの中では、気付くことすら稀なはずなのに
 静寂も、夕暮れも、風をきって走る感覚も
 どこか遠くに置いてきたはずなのに
 そうして私は大人びて
 毎日はせわしなく
 感傷なんか切り捨てて
 捕らわれないようにしてたのに

 簡単なもんだよな
 ひどくあっさりと
 無駄な抵抗をあざ笑うよう

 今更子どものように
 引き込まれてもいいのだろうか
 たまには昔のように
 時間だけ持っていた頃のように
 冬の雨の中の沈むような静けさに
 留まってみてもいいのだろうか
 ほんのしばらく
 
 私はそっと歩き出す
 そして次の角を左に曲がった
 脇道に逸れて、雑踏から抜け出して
 傘を肩にかけてくるりと回した
 少しくらい濡れても構わない
 ここに自転車はないけれど
 待ち合わせの約束もないけれど
 雨が私を包むから

 見飽きた道を外れていく
 ほんの少しだけ遠回り
 知らない景色が後ろに流れる
 あてもないまま真っ直ぐに

 雨の匂いと
 忍び込んでくる冷たさと
 くるりと回した傘の色が
 ひどく鮮やかで

 怖くはない
 淋しくもない
 見知らぬ道も
 一人の時間も
 怖くはない
 淋しくもない
 孤独で凛とした束の間の迷子
[PR]
by ichimen_aozora | 2004-12-09 16:32 | ひとり
雨の中
 雨の中で震えていた、誰かを思って無口だった君を、強引に引き寄せた事を、俺は後悔していない。
 きつい事を言って追い詰めて、泣かせた挙句、頷かせた事も。
 俺はひどい奴だったかな。
 乱暴な奴だと思われたかな。
 別に今更、多少の事では揺らがないけど。
 ただ俺は、君のことがとても大事で。
 だからいつまでも、そんな寒い場所にいて欲しくなかった。
 引きずってでも連れ出して、世界を見回して欲しかったんだ。

 だからそろそろ視線を上げて。
 君が思うよりはもう少し、世界は無防備に開けているんだ。
 前も後ろもないんだよ。
 君が踏み出すのならそれでいい。 
 俺ならきっと、どこにでもついて行くよ。
 君を一人にはしないから。
 この手をとって欲しいんだ。

 今はまだ。一番でなくても構わない。
 君が誰を想っていても。
 君が近くいればそれで。
[PR]
by ichimen_aozora | 2004-11-16 02:47 | ふたり sideB
貝殻公園
 目の前で雨が降るから
 二人くっついたまま待っていたんだ
 濡れていく自転車と
 赤い滑り台をずっと見ていた
 雨が降るから帰れないから
 いつまでも
 止まなければいいと願った
 遠い遠い日にここで
 
 日々は驚くほど早く回るから
 思い出す暇もないけれど
 わき目もふらずに早足で歩く
 そんな日々にも慣れてしまった
 そんな毎日を受け止めている
 そんな毎日を、懸命に駆けて行くけれど
 時々ふいに湧き上がるように
 蘇ったりするのです
 自転車をこぐ君の背中や
 並んで走り抜けた夕暮れの街
 帰りたくなくて数えた一番星や
 小さな公園の片隅のベンチ
 
 大きな木の下で
 閉じ込められたような気分
 濡れていく自転車と
 貝殻の形の赤い滑り台
 とても静かだったので
 疲れているのだと気付いてしまった
 苦笑いして目を閉じる
 想い出に縋るつもりはないけれど

 音もなく雨が降るので
 もうしばらくはここにいよう
 冷たい雨が止まないので
 もう少しだけここにいよう
 いくら待っても
 君は来ないと知っているけど
 目を開いても
 君はいないと知っているけど
[PR]
by ichimen_aozora | 2004-11-13 01:59 | ひとり
微々
雨が降って、雨が降って、少しずつ寒くなるように
泣いてみたりして、戸惑って笑って、少しずつ薄れていくのですか

絶対に忘れないと確信した、あの日の直感に嘘はなくても
重ならない日々が、あつく積もって
柔らかく、柔らかく、守ってくれるみたいに
[PR]
by ichimen_aozora | 2004-10-04 05:16 | ひとり
 滑るように静かな流れで、通り抜けていく穏やかな時間に、
 君は一人、立ち尽くしている?
 僕が隣にいることを、君はちゃんと覚えている?
 世界に所属できないように君は、流れの真ん中で歩みを止める。
 伸ばした背筋が潔くて、とても淋しいのだと分かっていた。
 緩慢に振り返る、視線がただ投げかけられる。
 感情が読めないいつもの瞳は、ただ存在だけを主張する。
 君は振り返り、そしておもむろに笑うだろう。
 完全に割り切ったような表情の向こうで、でも君はとても淋しいのだろう。

 冷たい雨に打たれているようだね。
 いつも。いつも。
 冷えた体を気にすることもなく。
 ただ雨の中にいるようだね。

 温まってもいいんだよ?
 誰かが差し伸べてくれた手を取ることは
 決して卑怯ではないんだよ?
 何も弱くなんてないんだよ?

 僕はいつまでも何も出来ずに。
 君の隣に立っていた。
 ここに傘があるんだよ。
 差し伸べる手もあるんだよ。
 ただ振り返った瞳だけが、僕の全てを拒絶する。
 優しく優しく否定する。
 君は笑って、ぞっとするほど
 つめたく冷えて
 僕は動けないまま、立ち去ることも出来ないまま。
 そして傘も捨てられないまま。

 まるで、賭け事みたいな人生だよな。
 そう言って君が笑って、僕は答えを探せなかった。




人気blogランキング←ランキングに参加しています。よろしければぺちっとひとつ☆
[PR]
by ichimen_aozora | 2004-09-25 05:40 | ふたり sideB